長い髪の幽霊

南部に名水百選の「垣花樋川」がある。沖縄ではよく知られた場所だ。村道脇に車を止めて徒歩で石畳の坂をしばらく下っていく、と岩山で浄化され湧き出てきた水溜りに出会う。山葵(わさび)の栽培ができそうな清らかな水だ。その樋川の下を海沿いに走る国道がある。下田ﾊﾞｽ停はそこにある。

 

深夜10時過ぎ、携帯が鳴った。「待ってるけど、まだ出てこないよ」　雨が降るさみしい夜だ。「そうか、今夜はまだか・・・。幽霊も雨は嫌(いや)なんだろう、まして長い髪の女性は、濡れると後が大変だ」　那覇行きの最終便、「じゃ、そろそろ出発するか」　「おお、気をつけてな・・・ﾊﾞｯｸﾐﾗｰに・・・」

 

屋我地の友人が特産の紅芋をどっさり持ってきてくれた。寒い夜は焼き芋が似合う。時間があったら取りに来いよ。食べきれないほどあるからな。長い髪の女性の分もな。幽霊だろうがなんだろうが、寒い夜には喜ばれるぞ。