好奇心okinawa’s blog

観光タクシーから見た沖縄

標(しるべ)

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本を読む時はカバーを外して読む。手垢は付くし雨に濡れてしわもできる。読み終わってからカバーや帯を戻すから見た目は新品だ(笑)
あ、これか・・・カバーを戻すときに気が付いた、二羽の鴉(カラス)。小川を漂う小舟の上で交わした何気ない会話、「雪が降ったら、二羽の鴉(カラス)を描きましょうか」(乙川優三郎「冬の標(しるべ)」)

墨で描かれた二羽の鴉(カラス)とはこんな感じの絵だったのか。
本心に蓋(ふた)をしたまま自分を誤魔化して生きてきたかもしれない。何のために生まれてきたのか・・・そんな事を思う生き方なんかしたくない。ようやく身を切るような別れも待ち受ける孤独をも受け入れ、思いのままに生きることを決断した女性をそこまで思わせた「標(しるべ)」とはなんだったのか。
作家乙川優三郎、気が付けばもう18冊を読んだ。どれもこれも一気に読むほどだったから、よほど感性が合っていたんだろう。しかし、童から姑(しゅうと)まで年齢を問わず、武士も武士妻も、武家だろうが農夫だろうが、よくもまあ人間の機微をここまで描けるもんだと感心する。同年齢という親近感もあるが、よくぞ同時代にいてくれたと感謝。