好奇心okinawa’s blog

観光タクシーから見た沖縄

ゆすらうめ(山桜桃梅)

誰にも経験があると思うが、小説は書き出しの一行に魅かれる。

 <(妙な桜だ・・・) 初めてその花を見たとき、考助は何の感慨もなくそう思った。>
貧しい農家の一家を助けるため、16で売られてきた娘、6年という年季を終え娼妓(しょうぎ)からようやく普通の暮らしに戻れるようになったその娘を考助は影ながら助けてきた、が、どうしようもない事情でたった3日でまた娼妓にもどらざるを得なくなる。・・・どこにでもころがってる普通の小説だ。(乙川優三郎「椿山」の一話)

孝助は前夜の嵐で散った白い花弁を何気なく見ていた。
「ゆすらうめも終わりですか・・・」と錦蔵が呟(つぶや)いた。
「何だって?」
「ゆすらうめですよ、なんでもちょいとした風にも揺れるんで、そう言うらしいですよ」

イメージ 1(妙な桜・・・)の正体が「ゆすらうめ(山桜桃梅)」だったのが明らかになる場面だ。
二度と這い上がれないことを見越した娘が考助に礼を言う、「でも、親は親です、こうして三日でもまともな暮らしができて幸せでした」
その、ちょいとした風にも揺れる「ゆすらうめ」・・・とは、一体どんな木なのか。はっ、なるほど、これは、「桜」と見間違える。
「桜」という漢字は昔は「櫻(さくら)」と書いた。これは、貝の飾りをまとったような女という意味の「ゆすらうめ」のことだという。