好奇心okinawa’s blog

観光タクシーから見た沖縄

嵐とお墓

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頼りない台風。帰社直後から、ちょっとはさまになってきたが、ま、ピークは夜半から明日の未明らしいからいいか。台風と聞いて、タクシー乗客が一段落したころ「今日こそ行かねば」と車を南部へ飛ばした。百十踏揚(ももとふみあがり)のお墓。 は?台風と何の関係が・・・。叔父の小説「百十踏揚(ももとふみあがり)」、全5巻のうち4巻目に入ってるが、すっかり嵌(はま)ってしまって、どうしても訪ねたくなった。小説の一節にこんなくだりがある。勝連城が猛烈な台風に見舞われた時の様子。

<嵐も呼吸している。その息をためるように、嵐が弱まったのを見計らって、「今だ。参るぞ!」阿麻和利は踏揚を抱いて、外へ飛び出した。あっ!と息をのんで立ち竦(すく)んだ。頬に吹き付けてくる風雨は刺すように痛くて目も開けられず、息もできず、体を飛ばされそうになる。悲壮というのは、こんなことであろう。命をかける思いで、よろめき、下グスクへの急な石段を滑らないように、吹き飛ばされないように、城壁にへばりついたりして下りはじめた・・・」
これが本物の台風だ。残念ながら身重の踏揚はその後流産してしまうが。

イメージ 2国の花と詠われ、嵐のような壮絶な短い人生を生き抜いた百十踏揚(ももとふみあがり)。そうか、こんなところに静かに寝ているのか。
取り囲む木々からセミの鳴き声が嵐のようにふりそそぐ。