穏やかな海

「風、強かったですか？午前中の羽田からのお客さんが、風で遅れたと言ってましけど」

「今日は札幌からですけど、風ではなく、昨日からの雪がｱｲｽﾊﾞｰﾝになってて、それで遅れたんですよ」

「今年の北海道は、ほんとに台風並みの低気圧が多かったですよね。・・・お客さんが乗る先ほどまで、実は東日本大震災の式典が行われていたんですよ（ﾜﾝｾｸﾞTVを観てた）。午後2時46分に一斉にｻｲﾚﾝが鳴ってね。」

「そうですね、今日はあの日ですね。私はその時千葉の病院にいて、ﾍﾞｯﾄの手すりにつかまったけど、それでもﾍﾞｯﾄﾞから床に転げ落ちたんですよ。ほんとに、建物がゆりかごみたいにゆれてね。」

「岩手、宮城、福島からの遺族代表の追悼の挨拶があったけど、どれも心に突き刺さるような挨拶でしたね」

・・・

「はい、あそこに見えるのがﾎﾃﾙです。こちら、ｻｻﾞﾝﾋﾞｰﾁ･ﾘｿﾞｰﾄ・ﾎﾃﾙは何度か来てるんですか？」

「糸満に来ること自体が初めてなんですよ。」

「そうですか。糸満はうみんちゅ（漁師）の町でね、終戦直後は那覇の胃袋を担った町でもあったんですよ。だから、ﾌﾟﾗｲﾄﾞもちょっと高いけど（笑）。ﾎﾃﾙの裏は綺麗なﾋﾞｰﾁ（美々ﾋﾞｰﾁ）になってるんで、楽しめるとおもいますよ」

「ありがとうございます。では、あ、釣り銭はいらないですよ」

お客さんを降ろしたあと、ちょっと海岸へ。あちこちで海に向かって手を合わせる東北のみなさんの映像がよみがえる。