好奇心okinawa’s blog

観光タクシーから見た沖縄

黒田さんという人

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寝起きに電話がかかってきた。着信に登録の名前が出てこない。誰だろう?「15年ぶりだね~、分かる?」と言う。親しげに話しかけてくる。「黒田です」「黒田という名字の方は東京と大阪に知ってる人がいるんだけど、他に誰だろう?」「東京の黒田です」ええ~!
76歳になるという。やっと声のイントネーションで完璧に思い出した。「家の整理をしてたら、あなたの電話番号が出てきたので・・・」とのこと。
二十歳代のころ東京で初めて一緒に仕事をさせていただいてから、一番長く仕事をともにした上司。過去の仕事上のさまざまな経験をする中で一番長くそばにいた人だろう。反発もし一時は不信感も抱いたことも、新部門の仕事の試みも、世界のあちこちの海外出張も、酒やゴルフの遊びも・・・いつも長く一緒だった。
76歳で現役でまだ仕事をしているという。個人で宅配業者依頼の間違いやら緊急の荷物を全国津々浦々軽トラックで運ぶという。あれほど国内出張もしたのに日本にはこんなに知らない場所がたくさんあったんだ、帰りは自由時間であちこち名所めぐりをし温泉にも入りお届け先からは「え~神奈川からきたんですか、どうぞこれを持って気をつけてお帰りください」と地元のお土産を頂くことも度々と・・・なんとも「夢のような仕事」をしているという。
過去のプライドは全くない。大手宅配企業から仕事をいただくのは「信用」だけ。自分のプライドなんてなんの意味もない。典型的な企業戦士であった黒田さんとは思えぬ、いや、だったからこその今の黒田さんか、楽しそうに、おおらかに、やさしくなっていた。
「あなたも、頑張りなさい」といわれた言葉より、突然の電話をくれたこと、15年ぶりだねと年月も覚えていてくれたことがなによりの嬉しい励みになる。一言一言のやりとりが以心伝心のように伝わる。こんな上司がいたんです。人は現役の時、若くて仕事に夢中の時には知りえなかったことが年数を経てやっと「本質」に触れる機会が来ることもある。時の流れは残酷でもあり、また嬉しくもある。
木々は枝が伸びすぎるとその度に伐採されながら、それでも上に伸びていく。